2010/09/19(日) 平成22年 第3回 大島能楽堂定期公演

2010/09/19(日) 平成22年 第3回 大島能楽堂定期公演番組ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「俊成忠度」 松井 彬
   狂言「盆山」 茂山千五郎
   能「砧」 大島政允

能 「俊成忠度」
一の谷の合戦で平忠度を討ち取った岡部六弥太は、遺骸の箙に短冊が付けられているのを見つけ、忠度の和歌の師だった藤原俊成に届けます。それには「行き暮れて木の下陰を宿とせば花や今宵の主ならまし」という歌が書き付けられていました。
その夜、俊成が文武に優れていた故人を偲んでいると、甲冑姿の忠度の霊が現れます。自作の「漣や志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」という和歌が、朝敵のため作者名を伏せて『千載集』に載った心残りを伝えますが、俊成の「この歌さえあれば名は隠れない」という言葉に安堵し、和歌の素晴しさを物語ります。突然様子が変わり、修羅道に堕ちて戦う様を見せたのち、和歌の徳により成仏を遂げます。

狂言 「盆 山」
盆山(盆の上に砂や石でつくる箱庭のようなもの)が欲しくてしかたない男が、いくら頼んでも譲ってくれない知り合いの家に盗みに入り、見つかって盆山の陰に隠れます。誰か気づいた知人がわざと「猿だ」「犬だ」と言うと、男は必死で鳴きまねをしますが、「鯛だ」と言われて困ってしまいます。

能 「 砧 」
筑前の国芦屋で、訴訟のために上京した夫の帰りを待つ妻のもとに、夫について行った侍女の夕霧が三年ぶりに帰ってきます。妻は長く帰ってこない夫を待つ辛さを訴え、遠くで砧を打つ音を聞いて、音とともに思いが夫に届くようにと、心慰めに砧を打ちます。しかし、夕霧から「殿はこの年の暮れにも帰らない」と告げられ、心変わりされたと確信し、絶望のあまり病死してしまいます。
翌春になって都から戻ってきた夫は、亡き妻を弔う法事を聞きます。するとやつれ果てた妻の亡霊が現れ、妄執の報いで地獄にいることや、裏切られた恨みを訴えますが、法華経の力で成仏を果たします。
晩秋の夜に砧を打つ場面など、非常に哀切で味わい深い曲で、作者の世阿弥にとっても自信作だったようです。