ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「枕慈童」 大島衣恵
狂言「水掛聟」 茂山正邦
能「熊坂」 大島輝久
能「枕慈童」
古代中国、魏の文帝の時代、酈県山から霊水が湧き出たので、勅使が水源を調べに遣わされ、山中で菊花に囲まれた庵を見つけます。すると不思議な少年が現れ、自分は七百年前、周の穆王に仕えていた慈童だと名乗ります。
怪しむ使者に、慈童は「王から授かった枕に書かれた経文を菊の葉に写し、その葉に落ちた露を飲んだところ、不老不死の薬となったのです」と語ります。そして、薬酒でもある霊水を汲んで勧め、自らも飲んで舞い、花の上に酔い伏し、目覚めて「帝に我が寿命を捧げる」と告げると、もとの庵に帰っていきます。
永遠の若さへの憧れや菊花のめでたさを描いています。伸びやかな〈楽〉の舞、菊を飾った華やかな作り物などが見どころの明るい曲です。
狂言「水掛聟」
田の見回りに来た聟が、自分の田の水が隣の舅の田に取られていることに気づきます。畦を切り水を引いて立ち去ると、舅が見回りに来て、聟の田から再び水を引いて見張りを始めます。
そこへ聟が戻ってきて口論になります。互いに畦を切って水を引こうとするうち、水を掛け合い泥をなすり合うけんかになり、とっくみ合いまで始まります。騒ぎを聞いた妻が駆けつけ、仲裁しようとしますが…
能「熊坂」
旅の僧が、美濃国赤坂で会った僧に、ある人の命日の回向を頼まれます。草庵に案内されると、仏像は無く武具が並んでいます。僧は、盗賊から道行く人を守るためだと語り、寝所に入るかと見えて姿を消すと、庵も消え失せます。
僧の正体は、かつて牛若丸と闘って落命した大盗賊、熊坂長範でした。その夜、熊坂の亡霊が現れ、闘いを再現します。熊坂は諸国の盗賊を集めて金売り吉次の一行に夜討ちを掛けますが、牛若一人に皆やられ、自身も大長刀を振るって奮戦したものの、さんざん翻弄されて討たれたのでした。
二人の僧の対話が静けさをかもし出す前場と、華麗な長刀さばきを存分に見せる後場との対比が鮮やかな名品です。