ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「景清」 金子匡一
狂言「呼声」 茂山七五三
能「葛城」 大島衣恵
能「景清」(かげきよ)
源平の戦に破れ、日向国宮崎に流された平景清は、今は零落して盲目の乞食となっています。
その娘の人丸が、父を探して鎌倉から旅してきます。偶然娘に出会った景清は、驚愕しつつも正体を隠してやり過ごします。
その後、里人から事実を聞いた娘は、伴われて父に会いに戻ります。景清は、里人だけが来たと思い、心を許して様々な思いを吐露し、人丸と対面すると、名乗らなかったのは子を思う故だったと明かします。娘に乞われ、屋島の戦で敵将三保谷の兜の錣を引きちぎった武勇を語り、しばし昔の勇猛さを蘇らせると、我が亡き後を弔うように頼み、互いの声を形見として娘を故郷へ帰すのでした。
猛将のかつての栄光と悲痛な現在を、感情の激動と共に描き出した傑作です。
狂言「呼声」(よびこえ)
無断で旅に出た太郎冠者がこっそり帰っていると聞き、主人は次郎冠者を連れ、叱ってやろうと家に行きます。次郎冠者に呼び出させますが、主人の用と勘付いた太郎冠者は、居留守を使います。主人が声色を変えてもだめなので、平家節や小歌節で代わる代わる呼びかけると、同じ節回しで居留守を使います。皆段々楽しくなり、踊り節で浮かれるうちに…
能「葛城」(かずらき)
大和国葛城山に修行に来た山伏一行が、急な大雪で困っていると、里の女が通りかかります。女は山伏を庵に招き、小枝を焚いてもてなします。そして「私のために祈祷して苦しみから救ってください」と頼み、自分が葛城山の神であることを明かして姿を消します。
夜更け、山伏の前に蔦葛に纏われた姿の女神が現れます。仏法の導きに感謝し、明るい月の照らす雪景色の中で大和舞を舞いますが、やがて夜明けが近づくと、姿の露わになるのを恥じて岩戸の内に消えるのでした。
伝説によると、葛城山の神は役行者から山と山の聞に岩橋を掛けるよう命じられますが、醜い姿を恥じて夜しか働かず、怒った行者によって蔦葛で岩に封じられたといわれます。孤独で人間味のある女神が魅力的な、詩情豊かな曲です。