ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「籠太鼓」 大島政允
狂言「舟船」 茂山千五郎
能「邯鄲」 大島輝久
能「籠太鼓」(ろうだいこ)
九州松浦の某が召し使う関の清次という男が、他郷の者と口論の末、殺してしまいます。某は清次を牢に入れますが、脱獄したので、その妻を呼び出し、行方を言うまで牢に閉じ込めます。そして用心のため、鼓を牢の柱に付け、番人に一刻ごとに見回りをして鳴らすよう命じます。
その夜、妻は嘆きのあまり狂乱に陥ります。夫を思う様子に同情した某は、牢の戸を開けて外に出そうとしますが、「この牢こそ夫の形見」と、出ょうとしません。妻は次第に物狂わしい態になり、牢を出ると、募る思いを語って鼓を打ち鳴らし、自ら牢に戻って戸を閉じます。心を打たれた某は、夫婦そろって罪を許すと約束します。すると、妻は正気に返って夫の居所を明かし、夫婦は末永く共に暮らしたのでした。
狂言「舟船」(ふなふな)
主人と太郎冠者が、西宮見物に行く途中、神崎の渡しで舟に乗ろうとします。冠者が「ふなやーい」と呼びかけると、主人は「ふね」と言うように注意します。冠者が「ふな」の出てくる古歌を次々引いて反論すると、主人も古歌を引用しますが、一首しか思い出せません。そこで謡の一節を思いつき、謡い出しますが、途中で困ったことに気づき…
能「邯鄲」(かんたん)
蜀の国の盧生という青年が、人生に悩んで旅に出、
邯鄲の里で雨に降られて宿を借ります。事情を聞いた女主は、使うと悟りを開けるという枕を貸し、粟飯を炊き始めます。枕を敷いて眠っていると、楚国の帝の勅使が現れ、盧生に帝位を譲ることになったと告げます。帝位に就いて栄華を極め、五十年が過ぎたころ、不老長寿の仙薬が奉げられ、宴が聞かれて盧生も自ら舞い、歓楽に酔いしれます。しかし、大勢の妃や官人、宮殿楼閣は一瞬にして消え失せ、もとの邯鄲の宿の枕の上で、女主に「粟が炊けた」と起こされます。
茫然として夢から覚めた盧生は、この世の儚さを悟り、迷いを晴らして故郷に帰っていきます。
能の特性を生かした場面転換が鮮やかな、特異な演出の傑作です。