ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「俊成忠度」 大島政允 ツレ 長田 驍
狂言「察化」茂山七五三
能「海人」 大島輝久 子方 大島伊織
ワキ方:福王知登、松本義昭、江崎欽次郎、大坪賢明
囃子方:笛 斎藤 敦
小鼓 成田 奏、成田達志
大鼓 谷口正壽
太鼓 前川光範
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止いたします。
能「俊成忠度」(しゅんぜいただのり)
一の谷の合戦で平忠度を討ち取った岡部六弥太は、遺骸の箙に短冊があるのを見つけ、忠度の和歌の師だった藤原俊成に届けます。短冊には「行き暮れて木の下陰を宿とせば花や今宵の主ならまし」という歌が書かれていました。
その夜、俊成が故人を偲んでいると、甲冑姿の忠度の霊が現れます。自作の「漣や志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」という和歌が、俊成により『千載集』に撰ばれたものの、朝敵のため作者名を伏せられた事への心残りを訴えます。俊成が「歌さえあれば名は隠れない」と慰めると、安堵して和歌の素晴しさを讃えます。
突然様子が変わり、修羅道に堕ちて戦う様を見せますが、和歌の徳により成仏を遂げます。
文武に優れ、和歌を愛した忠度の人柄が感じられる佳曲です。
狂言「察化」(さっか)
都の伯父に連歌の宗匠を頼もうと、主人は太郎冠者を使いに出します。伯父の名も家も知らないので、物売りをまねて大声で呼ばわると、見乞いの察化というすっぱ(詐欺師)が伯父のふりをし、屋敷に伴われます。
男の素性を知る主人は驚きます。事を荒立てまいと、太郎冠者にもてなしをさせ、失言ばかりなので、自分の口真似をするよう命じます。
能「海人」(あま)
讃岐国房崎の浦を、この地で死んだ母の追善供養のため、藤原不比等の嫡子、房前大臣が訪れます。一行は海女と出会い、昔語りを聞きます。
天智天皇の御代、唐土から贈られた宝珠が、海上で竜神に奪われました。そこで不比等は海女と契り、その子を世継にする代わりに、海に潜って宝珠を取り戻すよう頼みます。海女は死を覚悟して海に潜ります。竜宮から珠を取り、剣で胸の下を切って体内に隠して逃げのびますが、命を落とします。その海女の子こそ房前なのでした。
海女は、母の霊だと正体を明かし、弔いを頼む文を渡して海に消えます。房前が追善を行うと、母が竜女となって現れ、成仏できたことを喜びます。
前段は母の情愛や宝珠の奪還を劇的に描き、後段は爽やかに舞い納める、見所の多い面白い曲です。