<福山藩初代藩主水野勝成入封400年記念協賛>
ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「西王母」 大島衣恵 ツレ 大島伊織
狂言「因幡堂」 茂山千作
能「八島」 大島輝久
囃子方:笛 森田保美
小鼓 成田達志、成田 奏
大鼓 谷口正壽
太鼓 吉谷 潔
能「西王母」(せいおうぼ)
古代中国、周の穆王の御代、優れた統治により、世は豊かに栄えていました。王が人々に取り巻かれて威風堂々と座していると、美しい女性が、桃花の枝を持って現れます。「三千年に一度だけ咲き実を結ぶ桃が、王の威光により花開きました」と言って、王に花を捧げます。女性は、西王母の化身であると明かして天に上ります。
王は様々な音楽を奏で、西王母の再来を待ち受けます。すると、西王母が光り輝く姿で天下ります。王に桃の実を捧げると、宴に興じ、花や鳥とともに春風に乗って舞い遊び、天へ帰ってゆくのでした。
西王母は中国の神仙で、その園にある桃を食べると、三千年の長寿を得ると言われます。壮麗で晴れやかな、幸福感に満ちた能です。
狂言「因幡堂」(いなばどう)
大酒飲みで粗暴な悪妻に困り果てた夫が、里帰りした妻に離縁状を送りつけ、因幡堂の薬師如来に、新しい妻を授かるよう祈願に行きます。
妻は、激怒してお堂に駆けつけます。仏前で眠る夫に、薬師如来のふりをして「西門で新しい妻が待っている」とお告げをし…
能「八島」(やしま)
旅の僧が、春の夕べ、讃岐国屋島の浦を訪れ、塩屋の主の漁翁に宿を乞います。老人はいったん断りますが、僧が都から来たと聞いて、懐かしがって宿を貸します。僧がこの地での源平の合戦のことを尋ねると、老人は、源氏の大将義経の威容や、景清と三保谷の錣引きの争いなどについて詳細に語り、自分こそ義経の霊であるとほのめかして姿を消します。
その夜、甲冑姿の義経の霊が現れ、屋島の合戦で、海に落とした弓を命懸けで取り戻した誉れを語ります。死後も修羅道に堕ちて戦い続ける義経は、壇ノ浦での激しい舟戦の有様を見せると、夜明けとともに消えるのでした。
前段ののどかな春の情景と老翁の回顧談、後段の雄々しい戦語りの対照が見事で、作者世阿弥も修羅物の傑作の一つに挙げています。英雄の勝ち戦を颯爽と描きながら、終わりの無い修羅の空虚さも湛え、深みのある名曲です。