ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「蝉丸」 大島政允、大島輝久
狂言「寝音曲」 茂山七五三
能「鵺」 大島衣恵
ワキ方:福王和幸
囃子方:笛 左鴻泰弘 小鼓 久田舜一郎
大鼓 白坂信行
能「蝉丸」(せみまる)
延喜の帝の第四皇子、蝉丸は琵琶の名手です。しかし生まれつき盲目だったため、父帝の命で、出家させられ逢坂山に捨てられます。蝉丸は恨むことなく受け入れますが、独り山中に残されて深く嘆きます。その後、博雅三位の援助を受け、藁屋で暮らすようになります。
蝉丸の姉逆髪は、髪が普通とは逆様に、上向きに生えています。そのためか物狂いとなり、都を出て当ても無くさ迷っています。
ある秋、懐かしい琵琶の音を耳にして、藁屋にたどり着きます。姉弟は再会を喜び、互いの宿命を嘆き思いやります。やがて別れる時が来て、逆髪は去り、蝉丸は藁屋に残るのでした。
悲劇的な内容ですが、姉弟にはどこか淡々とした風格があり、詞章も美しく、詩情を湛えた傑作です。
狂言「寝音曲」(ねおんぎょく)
主人から、謡を謡ってみせるよう命じられた太郎冠者、今後たびたび謡わせられては面倒だと思い「酒を飲み、妻の膝枕でないと謡えない」と嘘をつきます。すると主人は酒を飲ませ、自分の膝枕で謡わせます。ときどき頭を持ち上げるので、冠者はそのたび声が出なくなるふりをしますが、繰り返すうち逆になってきます。
能「鵺」(ぬえ)
「平家物語」の源頼政の怪物退治譚をもとにした曲です。
摂津国蘆屋を訪れた旅の僧が、毎夜怪異が出るという海辺の御堂に宿ります。その夜、闇の中から怪しげな男の乗った小舟が漂い寄ります。男は、鵺の亡魂だと告白して供養を頼み、頼政の鵺退治について克明に語ると、不気味な鳴き声を残して沖に消えます。
やがて、鵺の霊が「頭は猿、胴は狸、尾は蛇で手足は虎、声は鵺鳥」という異形の姿を現します。帝を苦しめて射殺された無念、功名を揚げた頼政の栄光、死骸が空ろ舟で淀川に流された末路を再現し、暗い海の底へ沈んでいきます。
シテは、時には頼政、時には鵺の視点で演じます。英雄譚の勇壮さだけでなく、怪奇性や敗者の哀感も漂わせる、奥深い作品です。