ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「頼政」 大島政允
狂言「伯母ヶ酒」 茂山千三郎
能「山姥」 松井 彬
ワキ方:江崎正左衛門、江崎欽次郎
囃子方:笛 杉信太朗 小鼓 吉坂一郎
大鼓 谷口正寿 太鼓 大川典良
能「頼政」(よりまさ)
旅の僧が、宇治の里で老人に出会い、名所旧跡を教わります。老人は、僧を平等院に案内して「ここは源頼政が合戦に敗れて自害した場所で、今日がその命日」と伝え、頼政の幽霊と名乗って消え失せます。
その夜、頼政の霊が、僧形に甲冑を着けた姿で現れ、最期の有様を再現します。
治承四年の夏、頼政は、以仁王を奉じて平家に謀反を起こします。平等院に立てこもり、宇治橋の橋板を外して敵と対峙しますが、平家勢は、足利忠綱の指揮で大河を渡りきります。乱戦の中で息子達が討たれると、頼政は敗北を悟って「埋もれ木の花咲くことも無かりしに身のなる果ては哀れなりけり」と辞世の歌を詠み、自害したのでした。
頼政は歌人としても名高く、三位まで昇進を遂げましたが、七十六歳にして挙兵し敗れました。文武に優れた老将の最期の戦いを、鮮やかに描いた名曲です。
狂言「伯母ヶ酒」(おばがさけ)
酒屋を営むけちな伯母を甥が訪ねますが、どうしても酒を飲ませてもらえません。甥は「この辺りには鬼が出る」と伯母を脅し、帰ったふりをして、鬼の面を付けて戻ってきます。
本物と信じて怯える伯母に、今後は甥に酒をふるまうよう命じて、酒蔵に入って酒を飲むうち、酔って大胆になっていき…
能「山姥」(やまんば)
山姥の山廻りを謡う曲舞が得意で、百万山姥と呼ばれている遊女が、善光寺参詣の旅をします。険しい山道の途中で突然日が暮れ、困惑していると、女が現れ宿を貸します。曲舞を謡うよう頼み、自分こそ山姥だと明かして姿を消します。
月夜になり、山姥が恐ろしげな正体を現します。遊女の歌に合わせて舞い、深山幽谷の光景や、生まれも住みかも定まらぬ山姥の境涯を語り、時には人を助ける事もあると言って、山や谷を翔って山廻りの有様を見せると、どこへともなく去っていきます。
山姥の存在が大自然や人生の象徴として描かれ、壮大かつ哲学的で、独特な趣のある能です。