ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「玉井」 松井 彬
狂言「鬼瓦」 茂山 茂
能「花月」 大島衣恵
能「玉井」(たまのい)
火火出見命は、兄の火闌降命に借りた釣針を無くしてしまい、返すよう責められます。海中に探しに行って海神の宮殿に至り、井戸のそばの桂の木に隠れて様子を見ていると、水汲みに来た気高い姫たちと出会います。二人は海神の娘、豊玉姫と玉依姫でした。海神は命を歓待し、豊玉姫と結婚させます。
三年が過ぎ、命が地上に帰ることを告げると、姉妹の姫が潮満玉・潮干玉を捧げ、父神は釣針を探し出して奉ります。姫たちが美しく舞うと、海神も老龍の姿を現して雄大に舞い、命を巨大な鮫に乗せ、姫たちに玉を持たせ、潮を蹴立てて地上に送り届けると、龍宮へと帰るのでした。
「古事記」などの海幸山幸の神話をもとにした、華やかで壮大な曲です。
狂言「鬼瓦」(おにがわら)
訴訟のために長らく在京した遠国の大名が、故郷に帰ることになり、日ごろ信仰していた因幡薬師に、太郎冠者を連れお礼とお別れに参詣します。薬師を国許に勧請しようと、お堂を細かく見ていくうち、屋根の鬼瓦に目を留めます。
すると大名は、「面相が故郷の妻に似ている」と、懐かしがって泣き出してしまいます。太郎冠者が「すぐに会えます」と慰めると、大名も気を取り直し、二人で大笑いします。
能「花月」(かげつ)
九州彦山の僧が、七歳で行方知れずになった息子を探して京都の清水寺に来、門前の者から、花月という曲舞の名手の喝食の評判を聞きます。
呼び出された少年は、「花月」という名の由来を語り、小唄を歌って戯れます。桜の花を散らす鶯を見て、小弓で射落とそうと狙いますが、仏の殺生戒を思い出して弓を捨て、清水寺の縁起を語って曲舞を舞います。
僧は、花月こそ我が子だと気づいて名乗り出ます。親子が再会を喜んで帰園しようとすると、門前の者が、別れの名残に羯鼓を打ってみせるよう頼みます。花月は羯鼓を打ち鳴らして舞い、天狗に連れ去られて諸国を巡った身の上を語ると、父と共に仏道修行に旅立ちます。
美少年の芸尽くしが見所の、軽やかな作品です。