ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「花筺」 大島政允
狂言「清水」 茂山千三郎
能「雷電」 松井 彬
能「花筐」
越前国にいた男大迹皇子は、思いがけず帝位を継ぐことになり、継体天皇として都に上ります。寵愛する照日の前に、手紙と愛用の花篭を残していきますが、照日は恋慕のあまり物狂いとなり、花篭を持って都へ旅に出ます。
数ヵ月後の秋、照日は継体天皇の紅葉狩の御幸に行き会います。官人に追い払われて花篭を打ち落とされ、皇子に恋焦がれて泣き伏します。そして、漢の武帝が寵妃李夫人の死後、霊魂を呼び返してひと時姿を見、かえって嘆きに沈んだという故事に思いを重ねて狂い舞います。
それを見た帝は、花篭を召して照日だと確信し、再び側に仕えるよう命じます。照日は心晴れ、喜んで共に皇居に帰るのでした。
狂女物の中でも、特に幽艶で気品ある名曲です。
狂言「清水」
茶の湯で使う水を野中の清水で汲んでくるよう命じられた太郎冠者。行きたくないので、鬼に襲われたふりをしてさっさと帰ってきます。
すると主人が、冠者の置いてきた秘蔵の手桶を、自分で取りに行くと言い出します。冠者は先回りして、鬼の面をかぶって脅します。
主人は慌てて逃げますが、鬼の声や言葉を不審に思い、清水に引き返して、正体を暴こうとあれこれ言い出します。
能「雷電」
比叡山の座主法性坊の僧正が、月の夜更けに祈っていると、門の扉をたたく者がいます。それは、筑紫で死んだ菅原道真の霊でした。
僧正が招き入れると、菅公は日ごろの弔いと、学問の師としての深い恩を感謝し、「雷神となって内裏を襲うので、召されても参内するな」と頼みます。僧正が断ると突然鬼のような姿に変り、供物の柘榴を噛み砕き炎に変えて吐きかけ、煙に紛れて姿を消します。
その後内裏を雷神が襲い、僧正が召されます。菅公は雷鳴を轟かせて暴れ回りますが、ついに祈り伏せられ、帝から「天満大自在天神」の官位を賜ると、黒雲に乗って虚空に消えます。
静寂の中での対話から一変して、荒々しい雷神となる変化が見事です。