ところ:喜多流大島能楽堂
開演:12:30
番組:能「鉢木」 長田 驍
狂言「金藤左衛門」 茂山千五郎
能「黒塚」 大島衣恵
能「鉢 木」
上野国佐野で、旅の僧が大雪に難儀して貧しい家に宿を乞います。夫婦は粟飯をふるまい、秘蔵の梅と松と桜の鉢植えを焚いて暖をとらせます。感動した僧が素性を尋ねると、佐野源左衛門尉常世と名乗り、一族に領地を横領されて落ちぶれたことを明かし、今でも鎌倉の幕府に一大事があれば、一番に駆けつけて戦う決意だと語ります。
後日、召集に応じて鎌倉に集まる武将たちの中に、ぼろぼろの武具を着け痩せ馬を駆る常世の姿がありました。前の執権北条時頼に呼び出され、顔を見ると、それはあの旅の僧でした。この召集は、常世の言葉が真実かどうか確かめるためのものだったのです。
常世は本領を取り戻した上に新たな領地も授かり、面目を得て晴れ晴れと佐野に帰っていくのでした。
狂言「金藤左衛門」
盗賊の金藤左衛門が往来で獲物を物色していると、美しい袋を頭に載せた女が通りかかります。薙刀でおどして袋を奪い、中に入った着物や化粧道具を見て、「女房に土産ができた」と大喜びします。その隙に、女が薙刀を取って忍び寄ってきて…。
能「黒 塚」
回国行脚中の山伏祐慶の一行は、陸奥の安達原で行き暮れてしまい、寂しい一軒家に宿を借ります。主の女は生業の糸車で糸を繰りながら、生きる苦しみを語り、糸尽くしの歌をうたってみせ、決して寝室を覗かないよう頼んで夜寒をしのぐ薪を採りに出ます。しかし、あまりに強く念を押したのを不審に思った供の男が、部屋の中に腐った死骸が山積みになっているのを盗み見てしまいます。
慌てて逃げ出した一行を、秘密を知られた恨みで鬼女の本性を現した女が追ってきます。山伏の陀羅尼に祈り伏せられ、鬼女は己が姿を恥じつつ夜嵐に紛れて消え失せます。
安達原の鬼女伝説のもとになった曲で、人間の孤独や悲しみを描いた傑作です。