定期公演の記録(喜多流能楽教室から定例鑑賞能、そして定期公演へ)
クリックすると別タブでPDFファイルが開きます。
第1回開催にあたって
当地の能楽界は他の地方に劣らず、非常に隆盛で、我が喜多流のみならず他流に於ても、度々演能を重ねていますので、皆様方の、能楽に親しまれる機会も多い事と存じますが、果して本当に能を理解していただいているか、どうかと考えますに、聊か不安であります。
能は劇ではありません。いわゆるすじの面白さを狙ってもいません。能は我々の身近にある、あらゆる事象の本質を捉えて、それを美しく、象徴的に表現し、見る人の想像力にうったえて、その醸し出される雰囲気を味わっていただくものでありますが、然しそれには或る程度の予備知識が必要でありましょう。
能舞台には他の演劇に使う様な舞台装置はありませんが、能楽堂のあの落着いた雰囲気は是非必要であります。
然し残念ながら当地には本格的能楽堂はありません。私方の能舞台は、とても本格的能楽堂の雰囲気には及びませんけれど、それに近いものは得られると存じますので、当分この舞台で定期的に演能を観賞していただき、尚回数を重ねるに従い、あらゆる角度から解説を加え、座談会もひらいて、少しでも早く正しい能楽を理解していただきたいと思い、斯様な会をつくり能楽教室と名付けました。
芸術はなかなかむづかしく究極のないものであります。私も皆様方と共に能楽教室の一生徒として大いに勉強してゆかねばなりませんが、何卒この教室の発展のため今後一層の御支援をお願い申上げる次第であります。
昭和33年3月2日 大島久見
第100回を迎えて
昭和33年3月に第1回の能楽教室を催してより100回になりました。一口に100回とは申しますがこれは大変なことで、よくこれまで続いたものだなという実感です。地方で年何回という例会を催しているところはありません。随分苦しい運営ながら会員の皆様方の能楽に対する深いご理解と、温かいご支援によって25年間続けられました。深く深く御礼を申し上げる次第です。
芸の道は深遠で行き止まりがありません。尚、一層修行に励んで皆様方に良い能を見ていただきたいと思っています。 ー 後 略 ー
昭和57年4月18日 大島久見
第200回を迎えて
父久見が定期能を「能楽教室」と命名して昭和33年に立ち上げて以来、47年の時を経て、200回目の公演を迎える事となりました。
この度、第1回からの番組を整理してみますと、父が福山の地で能楽普及に注いだ強い情熱を感じ取る事が出来ます。また、この間ご出演頂きました能楽師の方々、鑑賞してくださった多くの皆様に、心より感謝申し上げます。
今後とも父の遺志を受け継ぎ、能楽発展の為、力を尽くす所存です。皆様の一層のご支援、ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。
平成17年2月11日 大島政允