理事長の独り言 7

福山JC 2009年度理事長メルマガ 大島衣恵

 桜の美しい季節を迎えました。今年は暖冬の影響でずいぶん早くなるという予想でしたが、結果的には満開の時が四月にかかって、皆さんお花見の予定も順調だったのではないでしょうか?
 私たち日本人にとって、桜はちょっと特別な存在です。太古の昔から、和歌でも「花」といえば「桜」を表すことからも分かるように、四季のうちで皆が最も待ち望むのがこの桜の季節と言えるでしょう。
 東京での学生時代には、谷中・上野の辺りをお花見をしながら大学へ通っていました。といっても日頃は静かな上野公園の朝も、この時期だけは大変な大騒ぎで大演芸大会が繰り広げられるのです。争うようにカラオケを謡う人達、チンドン屋さんや妙なパフォーマンスを延々と披露する集団、その回りで朝からブルーシートを広げて大宴会が催され、学校に行く気力を奪われそうになりながら、どうにか大学へ辿り着いていました。
 谷中の方面は墓地のメッカですのでずいぶん静かではあるのですが、墓地の中で花見をする人々という、良いのか?という光景を、これまた横目にしながら通っていました。
 桜にかこつけて友達と集まるのは楽しいものですが、いつの時代も花の名所で静かに桜を愛でる、というのはなかなか難しいかも知れませんね。
 平安期の歌人、西行法師は桜を追い続けて旅のうちに生涯を閉じました。古木の桜を一人眺めているところに、花好きな友が大勢押しかけてきて迷惑だ、という気持ちを歌に詠んでいます。
    「花見んと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜のとがにはありける」
 騒がしい人達が来てしまうのは花のせいだ、ということですね。そんな西行に反論するため桜の精が老翁の姿で現れる「西行桜」という能の曲があり、墨絵のような渋くさびた桜の世界が描かれています。最後に、自らの一生を桜に捧げた男のロマンをもう一首。
    「願わくは花のもとにて春死なん その如月の望月の頃」
 この世界を味わえるようになったら大人として一人前と思いますが、JC世代のうちはまだまだ花より団子でもいいかな・・・?