文化の秋、芸術の秋といわれるこの季節。今年はとりわけ様々なところに出かけ、多くの方々と出会う機会を頂いています。
今月初旬のある日、京都西本願寺を訪れました。西本願寺の新門・大谷光淳さんと、広島の茶道上田宗箇流の若宗匠・上田宗篁さん、そして私の三名での鼎談、という中国新聞の新春紙面の企画です。
西本願寺は浄土真宗の本山として余りにも有名ですが、日本最古の能舞台である北舞台、更には日本最大の能舞台である南舞台、その上大広間にも畳を上げれば能舞台がある、という能舞台だらけのお寺でもあります。豊臣秀吉が作らせたという、福山とも縁を感じる北舞台を是非拝見したい!と長年思っていましたので、とても楽しみに出かけました。
この度の企画は、和文化を担う三名がそれぞれの分野で大切にしている「こころ」について、30代の青年の目線で語ろうというものです。仏教も茶道も能も、目に見えないものを大切にする精神に共通項があるのではないか、という視点が鼎談の中心であったと思います。そして、自身がこの道に専心した経緯やこれからの将来をどう描きたいか、ということにも話が及びました。
お二人とも20代の時には自分の立場に対しての葛藤、自分への不安と常に戦っていた、と話されました。何か自分に対して自信をつけたい、という気持ちで他ジャンルのことにチャレンジした時期もあったそうです。能楽の世界でも同じ、恐らく企業の後継者も同じかも知れません。生まれ育った環境に対して、自分にそれを担うだけの力が備わっていない現実。その狭間で悩み苦しみ考え抜いて、本当に心が定まったと自分で言い切れたとき初めて、その道の一歩を踏み出せるのだと思います。自分で決めた道だから、と覚悟が決まればあとは進んでいくのみ。その時々の課題や困難にあたっても、きっと心が折れてしまうことはありませんし、むしろ充実感をもって臨むことができるでしょう。
鼎談の最後に「やっぱり、愛ですね」と若宗匠。思わず「えっ?」と聞き返してしまいましたが、「愛を持った人がその道にいれば、未来は大丈夫です!」と爽やかに言い切られ、深く納得したのでした。 皆さん、「愛」持っていますか?