理事長の独り言 16

福山JC 2009年度理事長メルマガ 大島衣恵

 八月一日の納涼会では、多数の特別会員の皆さまにご出席を賜りましたこと、衷心より篤く御礼申し上げます。限られた時間ではありましたが多くの先輩方とお話することが出来、また数々の励ましのお言葉を頂き、私にとりましても大変有意義な時間となりました。
 現役会員一同おもてなしの心を持って当日を務めましたが、先輩方にはいかがお感じになりましたでしょうか。反省すべき点も併せて、ご意見ご感想など頂ければ幸いに存じます。
 今後は更に来年の50周年に繋がるよう、石井次年度理事長予定者とも力を合わせて邁進してまいりますのでどうか引き続きご支援、ご協力をお願い申し上げます。
 納涼会の次の日から10日間、アメリカはペンシルベニア州ブルームズバーグという町を訪れ、N.T.P.(Noh Training Project)というプログラムの日本人講師の一人として参加して参りました。15周年を迎えたこのプロジェクトは、アメリカの各地から総勢30名ほどが集まって能の稽古三昧の三週間を過ごし、最終的に成果発表の公演を行うというものです。
 参加者の中には日本通なアメリカ人やアメリカ在住の日本人も数名いらっしゃいましたが、殆どは日本語を話せないアメリカ人の方たちです。演劇に携わっている人が多く舞台感覚に優れていることもあるのですが、それにしても古典の謡を諳んじて謡うなど、日本人にとっても難しいことに熱心に取り組む姿勢には心底敬服させられました。
 能の実技はとにかく基礎力が大切なので、集中的に繰り返し稽古し、しかも能楽の全体像に迫ろうとするこのプロジェクトは非常に効果的です。最終の公演では初心の人、経験者いずれもそれぞれの力を発揮し、立派に舞台を務めることが出来ました。
 私も指導にあたって作法の一つ、舞の型や基本の構えに至るまで「どうあるべきか」「なぜこうなるのか」ということを常に意識し、それをどう伝えるかに心を砕いた勉強の10日間となりました。
 今回の滞在中、年末に予定している英語での新作能の稽古にも入りました。英語で能の謡をうたう、私にとっては未知の経験です。会話もままならない言語で能を演じることが本当に出来るのか・・・?という自分への不安が拭えませんが、日本の古典を謡った彼らに対して言い訳することなど出来ません。
 「イタリア語で始まったオペラが、現代では日本語も含めた数々の言語で演じられている。能にもその可能性があるんだ。」とはN.T.P.の主宰者R.エマート氏の言葉です。世阿弥が「能には果てあるべからず」と言ったその心に少しでも近づけることを念じて、この挑戦に向かいたいと思っています。