日毎に暑さが厳しくなってまいりました。どうか皆さん、くれぐれも体調には気をつけて暑い夏を元気に乗り切ってまいりましょう!
夏の風物詩といえば「薪能」(強引ですが)。今年も7月28日の八幡宮薪能に私も少々出演させて頂きます。ぜひお誘い合わせてお出かけ下さい。
能の話が続きますが、先月「芦刈」という能でツレ(助演者)を勤めました。中世の世話物劇に近い、能としては少し変わった曲です。
今の大阪、難波の里に生活苦に耐えかねて離別した夫婦がありました。妻はその後幸運にも名家に乳母として勤め、社会的自立を果たします。夫は一層の貧乏暮らしで、遊芸をしながら芦の葉を売って生活をしのいでいました。出世した妻はあるとき難波の里を訪れると、遊芸者となった夫と再会し、夫婦は連れ立って都へ上る、という最終的にはめでたいお話です。
ちょっと情けない後ろ向きな夫と、明るく逞しい前向きな妻という、現代でもこんなご夫婦いらっしゃるのでは?という二人。夫は別れたことをいつまでも後悔して、再会したときにも愚痴っぽい言葉ばかりを述べます。それに対して妻はどこまでも現状肯定派。互いのために別れる決断をしたのだからと、決して後悔せず精神的にも強い女性です。この姿勢の違いが、二人の運気に大きな差を生んだのだと思われます。ツレ(妻)の役を演じてみて、なんてこの人は前向きなのかと驚かされました。600年前も今も、人間模様の妙に変わりはないのですね。
ロシアのことわざにも「困難には幸運が隠れている」という言葉があるそうです。どんな時も前向きに、幸運を見つけたいものですね。