ヘルシンキから飛行機で一時間、スウェーデンのストックホルムに到着しました。ヘルシンキに比べて規模も大きく、多様な人種の人々で賑わう国際都市といった感じです。水の都とも言われ14もの島から成り立つこのまちには、美しい森と水辺の風景が広がります。
公演最終日のことです。劇場スタッフの女性が、能についての印象的な感想を寄せてくださいました。
今回上演した「天鼓」という能について。この曲は、愛用の鼓を取り上げられたうえに帝の勅命を背いたとして殺された少年・天鼓の物語です。その霊が弔いに感謝して姿を現し、再び鼓を打てることを喜んで舞い、夜明けと共に消えてゆくという筋立てです。
その女性はこの能を観て、「最も心に残ったのは、天鼓の帝に対する許しです。権力に翻弄され悲劇の最期を遂げたにもかかわらず、一言の恨みも言わずただ純真に鼓を打つ姿に、深い悲しみと感動を覚えました。この曲をあらゆる国の指導者が観たなら、世界平和の実現が出来るでしょう。」
激動の時代に多くの悲劇を身に受けながら、ひたすらに芸の結実に生きた世阿弥のメッセージが、時代と国境を越えて人の心に届いた瞬間だったと思います。私たち公演団の一同そのことに改めて感動し、充実感を噛み締めながら帰国の途に着きました。
青年会議所運動も目標は「世界平和」。先日のばら祭で咲き誇った「善意の花」の心を世界の人々に伝え共有出来るような活動を、これからも一つずつ積み重ねていきましょう。